スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班 (2019):映画短評
スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班 (2019)ライター3人の平均評価: 3.3
ド派手なカースタントと骨太なストーリーのバランスが絶妙
表向きは巨大企業の若き会長、その裏で数々の犯罪に手を染める元カーレーサーの実業家チェ・ジョンソクの悪事を暴くべく、コン・ヒョジン率いる交通課のひき逃げ専門捜査班が巨大権力に猛然と立ち向かっていく…という韓国版『ワイルド・スピード』的なカーアクション映画なのだが、実質的には交通課のたたき上げ巡査リュ・ジュンヨルとチェ・ジョンソクの一騎打ちと見るべきだろう。どちらも辛酸をなめた貧困層の出自ながら、善と悪に道を分けた2人の火花散る執念の対決を通して、韓国における階級社会の理不尽が浮かび上がる。ハリウッド映画ばりのド派手なカースタントもさることながら、骨のあるストーリーも見どころだ。
ハチロクの改造車も登場!
長回しを多用したカーチェイスなど、『ワイルド・スピード』とも「頭文字D」とも違う泥臭さが韓国映画らしい。『EXIT』のボンクラ男から一転、楽しそうに冷酷無比な実業家を演じるチョ・ジョンソクも悪くない。ただ、『毒戦 BELIEVER』同様、物語が進むことに違った顔を見せ、ハチロクも走らせるリュ・ジュンヨルの方が完全に美味しい役回りだ。“ラブコメの女王”コン・ヒョジンが主演だけに、彼女を引き立たせるようなエピソードが盛り込まれたことで、どこか散漫な印象も強く、133分の尺はやはり長い。そのため、ダークな世界観を徹底していた『コインロッカーの女』のハン・ジュニ監督作としては、どこかモノ足りない。
ハリウッド的韓国映画だが、ある意味、それを超えた!
スケールの大きさはハリウッド的で、一気に見せ切る2時13分。韓国製アクションの新たな息吹を感じさせる。
巨悪の追求というポリス活劇の基本を縦糸にしたストーリーは、ひき逃げ専門捜査班という警察署内のアウトロー的ポジション内のユーモラスな描写につながり、引いてはカーチェイスなどのアクション、怒りの反撃へと発展。長尺だが先読みできず、退屈することなく楽しめた。
リアリティの点ではキャラの瞬間移動や天候のドラマチック過ぎる急変などツッコミどころはある。それを補うのが、男も女もぶん殴られては血を流す熱血描写。♯metooシンドロームで描写に腰が引け過ぎている現在のハリウッド映画は見習うべきだ。