ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像 (2018):映画短評
ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像 (2018)家族よりも芸術に重きを置いた老画商の“気づき”とは?
老いた画商の最後の賭けに二重の意味を持たせた脚本と、日本人にも共通する“みなまで言うな”的なフィンランド人のメンタリティが胸に沁みた。アートと山っ気ひと筋で生きてきた主人公オラヴィが、孫オットーとの交流で人生に欠けていたあることに気づく過程は予想がつくが、彼を愛されキャラにしなかったのは脚本家A・ヘイナマーの英断だ。欠点が見えるからこそオラヴィの人間くささに共感できるし、彼の“気づき”の意味も深まる。オラヴィがI・レーピン作ではと目を付ける署名無き絵画のオリジンをめぐる謎解きも重要なのだが、美術館キュレーターの見解と私個人の考えが一致して、我が意を得たりとニンマリ。ノンフィクションですけどね。
この短評にはネタバレを含んでいます