子供はわかってあげない (2020):映画短評
子供はわかってあげない (2020)ライター2人の平均評価: 4
スクリーンから夏の匂いがする
ヒロインがアニオタゆえ、冒頭から挿入されるオリジナルアニメをガチで製作するほか、肉親をめぐる少女の成長の旅を描くなど、『麦子さんと』と通じる部分もある沖田修一監督作。かなりヘヴィな話をオフビートな笑いを交えて描くあたりは、さすがの沖田節で、「アデュー!」がセルフパロディな上白石萌歌はもちろん、『町田くんの世界』を飛び出した細田佳央太に、『いとみち』に続き、父親役がハマる豊川悦司がハマる。ただ、次々と事件が起こる展開でもないので、138分の長尺をどう捉えるか、で評価が変わるのも事実。スクリーンから夏の匂いがする夏休み映画として、流れに身を任せるのがベターといえるだろう。
日本映画コンテクストの継承と更新を続ける監督
ハズレなしの沖田修一だが、今回は通例の「若年寄」イズムよりも瑞々しさが勝つ! 相米慎二の『ションベン・ライダー』や『夏の庭』、松岡錠司の『バタアシ金魚』等を受け継ぐ思春期模様の傑作。「真面目になればなるほど笑ってしまう」という聡明にして青い高校2年の美波(上白石萌歌、凄い!)の通過儀礼。行方不明だった父(豊川悦司)との風変わりなバカンスを体験する。
「家族」という主題のキーパーソンは、魔法少女アニメのOPダンスを踊るところから美波と抜群の相性を見せる「義理の父」役の古舘寛治だろう。彼は沖田監督の初長編作『このすばらしきせかい』でも「父のようなおじさん」だった。しかも役名は同じ「キヨシ」だ!