G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ (2021):映画短評
G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ (2021)ライター3人の平均評価: 3
ハリウッドが描く日本でこの方向性、むしろ楽しいような…
ハリウッド大作の日本描写は、映画ファンならむしろツッコミどころを発見しながら観る方が楽しい。ポリコレ意識も、リアリティもあまり必要のない『G.I.ジョー』の世界で、このアプローチは正当。日本での大々的なロケと、起こっている事態のアンバランス感、そしてやや過剰な美術や衣装もケレン味として魅力になっている。懐かしの「赤影」も蘇る、忍者ワールドの原初的な怪しさを発見したシーンも。
主人公に課される試練、その乗り越え方は、ちょっと狐につままれた印象もあるが、これも日本文化へのリスペクトと思えば微笑ましい。谷垣健治のワイヤーワーク、殺陣への野心全力貢献が、アングルや編集で見せきれていないのが惜しまれる。
アジア系俳優主体でハリウッド活劇が成立する奇跡
子どものころに見ていたら絶対に夢中になっていただろう……そんな気持ちで、この戦隊シリーズ風のアクションに見入ってしまった。
とにかく“動ける”役者たちの肉体言語が圧倒的で、ニンジャ・スタント的には大満足。メインの舞台となる日本の描写には疑問符は付くものの、そもそもこのシリーズ自体、荒唐無稽であることを思えば納得できる。大蛇とのバトルなどの奇想天外なアクションには理屈抜きに燃えた。
何より、わずかな白人を交えつつ、アジア系俳優をがっつりキャスティングしている点は、ある意味、奇跡。『シャン・チー~』に次いで多様性重視のハリウッド大作の分岐点となるかもしれない。
久々に突き刺さる“奇妙なニッポン”案件
岸和田城や京橋などで、しっかり日本ロケが行われながら、1980~90年代のデジャヴ感が尽きない、いろいろ間違ってる“奇妙なニッポン”案件。忍者組織の入門テストとなる“三つの試練”には、師匠役でイコ・ウワイスも登場するものの、まさかの展開にズッコケ。そのほか、『G.Iジョー』のスピンオフを期待すると、間違いなく肩透かしを喰らうものの、見事な跳躍力を魅せる石田えりやラスボス感溢れる平岳大など、日本人キャストは健闘しており、これはこれで面白い。ただ、劇中サマラ・ウィーヴィングより、「ペーパー・ハウス」の“トーキョー”ことウルスラ・コルベロの方が推されている件は、異議を申し立てたい。