精神0 (2020):映画短評
精神0 (2020)「先生」が0(ゼロ)に身を置く日
新型コロナ禍に際して東風と共に配信「仮設の映画館」を開設した想田和弘監督の新作。もし本作が『精神2』であれば「こらーる岡山」群像の10年後に焦点を当てただろうが、今回は山本昌知医師の妻・芳子さんが浮上。『天才作家の妻』的な苛烈な逆襲とは裏腹に、山本先生が破格の「いい男」であったことで、むしろ古典的な愛とパートナーシップの物語が現実から出力される。
監督のカメラが在りながら、やがて「二人きり」の世界へと純化されていく凄さ。想田監督いわく「期せずして『純愛』の映画になった」。日常の一コマからラブストーリーの原型(『0』)が立ち上がる迫力。「手をつなぐ」ことの意味、肌の温もりは今こそ痛切に伝わる。
この短評にはネタバレを含んでいます