ソウルフル・ワールド (2020):映画短評
ソウルフル・ワールド (2020)ライター2人の平均評価: 4.5
魂の世界はかわいく、日常の愛おしさに深部レベルで感動
ピクサー作品は特異な設定に毎回、不安を抱くが、今回も冒頭の魂の世界は、キャラが子供っぽすぎたりしてやや冷静に観ていた。しかし、何もかも異なる主人公2人の共同作業を楽しくスムーズに進ませる展開に、『レミー』など過去の大成功作の職人技が生かされ、ズブズブと物語に入り込んでいく。そして「相手の気持ちになることで本音を言える」「得意なものを見つけるべきか」「夢を叶えた後の気持ち」など教訓テーマが、あまりに美しくドラマにとけこむ奇跡に浸ることに。
主人公たちが目にするNYの喧騒、人々の日常の営みは、2020年の今、一緒に眺めることで別方向の心の揺さぶりにかけられ、涙が流れた。これも映画のマジックか。
どんな人生にも同じだけの価値がある
我々は、夢を持て、大きなことを達成しろと言われて育つ。でも、何がやりたいかわからないままでいたとしても、その人生には同じだけの価値があり、喜びがある。そんなメッセージを持つこの映画は、どんな時代に見てもすばらしいが、コロナで多くの人が思わぬ人生の変化を強いられる中、とりわけパワフルだ。それを、ジャズという、”今という瞬間を生きる”世界でやっているのも、ぴったりすぎてすごい。ジャズの音楽も素敵だし、本当に目の前でライブを見ているような演奏のシーンにも心が躍る。笑えて、泣けて、最後にまた微笑んで、見終わった後もずっと考えてしまう、いかにもピクサーならではの作品だ。