おばけ (2019):映画短評
おばけ (2019)個的な小宇宙から観たことのない映画が産まれる
たった独りでアニメーションを作っている男の日常が映し出される。小さな子供を2人抱えた彼の自問自答的な焦燥。それ(あいつ)を遠い視座から相対化し、エールを送るように関西弁の星ふたつ(声は金属バット)が宇宙から優しくツッコミを入れる。
この男、中尾広道の「好きなもの」は映画の中にも散らばっている。旭太郎の昭和15年のSF漫画『火星探検』、玩具映画『火星飛行』。ブルーハーツ/真島昌利。全体としては宮沢賢治とウディ・アレンとアートアニメが大阪で出会ったような……。固有の「人生」の転写が原始生命体のごとき映画の新種を誕生させる。PFF2019の一等賞に輝いた結果的に他の何にも似ていない異色の珠玉作。
この短評にはネタバレを含んでいます