パヴァロッティ 太陽のテノール (2019):映画短評
パヴァロッティ 太陽のテノール (2019)ライター2人の平均評価: 4
まさしく太陽のような、天才歌手の記録
オペラに興味がなくても楽しめるのは、やはり"素材"の魅力があってこそ。
性善説を信じる陽気な楽天家で、直感で行動するパヴァロッティ。”太陽の”という邦題は言いえて妙。彼に押し切られるかたちでU2のボノはチャリティに参加したと語る。シニカルな視点を持つロック・アーティストを自分のフィールドに巻き込んでしまうことは、強烈なまでの陽性の表われだ。
『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK~』以来のドキュメンタリー仕事となったR・ハワード監督はパヴァロッティの人生と人間性を記録的にとらえているが、そんな客観性も、オペラファン以外の観客を引き込む理由だろう。
もちろん歌声は奇跡的。そして愛さずにはいられないキャラ
パヴァロッティといえば、2006年トリノ五輪開会式で「誰も寝てはならぬ」を歌い、そのトリノで同曲で滑った荒川静香が金メダルという“偶然”を記憶する人も多いはず。この「誰も寝てはならぬ」をドミンゴ、カレーラスと3大テノールで歌うなど歴史的ステージの数々は有無を言わさぬ感動。フッテージの限られた前半は、ややお行儀のいいドキュメンタリーの印象だが、劇的パフォーマンスが頻出する中盤からの盛り上がりに引き込まれる。ダイアナ妃との関係や、ジャンルを超えたミュージシャンとの交流には「とにかく相手を信じる」という人たらしな側面が微笑ましく、歌で女性を口説くやや黒歴史もスパイスで、ラストは文句なくブラボー!