なぜ君は総理大臣になれないのか (2020):映画短評
なぜ君は総理大臣になれないのか (2020)ライター2人の平均評価: 4
したたかに、問いかける「理想の政治家とは?」
大島新監督は、映画『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』のプロデューサーでもある。本作の小川淳也議員とムヒカ元大統領は共通点が多い。共に愚直なまでの熱い志で政治家になったが、金と権力に興味がなく生活は質素。しかし方や大統領となり、方や衆院選で香川1区のトップ当選すら難しい。この差は何か。本作では上昇志向の希薄な小川議員の性格が指摘されているが、大島監督はしたたかに我々に問いかける。票を投じる国民の民度の差ではないか?と。確かに我々はあまりにも狡猾な政治家を見過ぎて、それが正解だと刷り込まれてきてしまった。その認識を改め政治家を見る目を養わないと手遅れになるゾという警鐘映画である。
理想論? いや、これこそ政治家のあるべき原点だろう
一人の現役の衆議院議員を追ったドキュメンタリーというだけでも日本では貴重。一人の考えを収めるので、プロパガンダになりそうだが、思想が偏らず、あくまで日本の未来を考え、憂慮する小川淳也議員の姿勢に寄り添う。キレイゴトかもしれない。しかし政治家が理想や信念を失ったら意味がないことを教えられるし、徹底して「自分の言葉」で語る彼の姿に、今の政治家に欠けたリーダーシップと能力を感じるはず。
一方で日本の選挙制度の問題点を鋭く提起するのは、監督の意図だろう。
最初は反対した家族の選挙協力も感動的だが、父親がふともらすある言葉には涙を禁じ得ない。政治が混迷する今のタイミングで、間違いなく必見の力作。