カラー・アウト・オブ・スペース -遭遇- (2019):映画短評
カラー・アウト・オブ・スペース -遭遇- (2019)ライター5人の平均評価: 3.2
“宇宙からの色”を浴びよう!
原作も原作だし、『マンディ』延長戦といえるニコケイ主演だし、かなりムチャクチャやってくれると思いきや、かなりオーソドックスなホラー演出で攻めてくる。トミー・チョンを迎えたラリラリ・トリップ感覚などの懐かしさを含め、ガチで『ダスト・デビル』(92年)の次回作にあたるリチャード・スタンリー監督、待望の復帰作といえるだろう。しかも、アルパカ!を連呼するうちに、次第に『マッド・ダディ』化していくニコケイ効果もあり、『未知との遭遇』『遊星からの物体X』のラインを狙いながら、どうしてもスチュアート・ゴードンぽくなってしまう愛らしさ! この夏、涼しい映画館で、“宇宙からの色”を全身に浴びるのも悪くない。
トリップ感満載のサイケデリックなラヴクラフト映画
原作は’60年代に『襲い狂う呪い』、’80年代に『デッドウォーター』として映画化されたラヴクラフトの小説「宇宙からの色」。夢の田舎暮らしを始めた一家の庭にパープルピンクの光を放つ隕石が墜落し、汚染された水や野菜を食べた家族がどんどん狂っていく。脚色・解釈の面白さでは『デッドウォーター』に軍配が上がるものの、本作のサイケデリックな極彩色に満ちたトリップ感とクライマックスへ向けて疾走する狂気もまた格別。連綿と続くラヴクラフト映画の流れにおいては、終盤のドロドログチャグチャな阿鼻叫喚などは特にそうだが、恐らくスチュアート・ゴードンの系譜に連なる作品と言えるかもしれない。
サイケな夏をアーカムで!
地球が真っ赤なオブジェ状のものに覆われる『宇宙戦争』を思わせるが、こちらはサイケなピンク・パープルの光が地球に及ぼす影響が恐ろしい。平穏な田舎暮らしを求めた一家に降りかかる悲劇の源は隕石なのだが、連発する謎の出来事がもう「なぜこうなるの?」としか思えないほど残酷。特に光を浴びた母親と次男に起こる出来事は恐ろしすぎた。原作の出版は1927年なので、作家ラヴクラフトが意図したテーマは未知の宇宙への恐怖なのだろう。しかし平凡な家族や静かな田舎町が破壊される展開は、水質汚染や環境破壊を起こす人類への戒めなのかとも思わせた。すっかりB級映画スターとなったニコケイが狂気にまみれていくネイサンを大熱演!
ニコケイの暴走演技とピンクパープル怪現象の味のあるバランス
隕石落下に端を発する地球外の敵との闘いに、怪現象の数々と、「得体の知れなさ」感が全編にいい具合に充満。ピンクパープルを基調にした映像が、怖さや緊迫以上に、なまめかしい気分を呼び起こすのも、ちょっと不思議な体験かと。アルパカや猫、昆虫など人間以外の生きものたちの変容も、絶妙なスパイスとなっている。
怪奇小説のレジェンドによる原作だが、SF色、もっと言えばシャマラン風のミステリアスなテイストが濃厚。
ボサボサ髪も愛おしく、またしても狂気に走るニコラス・ケイジの演技だが、近年作品のアクの強さは、やや薄まっており、ハズした面白さを期待すると肩透かしだが、一般レベルでは見やすくなっているのでは?
リチャード・スタンリー監督、何と20年ぶりの新作!
ちょっと気になるSFホラー「ハードウェア」(90)、「ダスト・デビル」(92)を撮ったリチャード・スタンリー監督は、初の大作「D.N.A.」(96)を途中降板してからずっと新作がなく、なのに時々イベントでの発言を見かけたりする不思議な人物。そんな監督の20年ぶりの新作が登場。原作は噂通りにラヴクラフトのクトゥルフ神話、主演はニコラス・ケイジ、製作に「マンディ 地獄のロード・ウォリアー」のスペクトルヴィジョンが参加とくれば、見ないわけにはいかない。ヴィジュアル最優先主義も、音楽が饒舌なのも前2作と同じ。役名、画面に出てくる本の表紙、ラジオのニュースの地名など、細部にも小ネタがギッシリ詰まってる。