ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン (2019):映画短評
ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン (2019)ライター3人の平均評価: 4.3
半世紀以上前に多様性を実現していたカルダンの先見性
ピエール・カルダンの生い立ちやキャリアはもとより、日本ではあまり知られていなかったプライベートまでをも本人が赤裸々に明かすドキュメンタリー。それまで一部特権階級の贅沢だったファッションを一般庶民にまで広げ、一代で巨大なブランド帝国を作り上げたビジネスの才能も然ることながら、着る女性の体型を問わない服作りや人種に囚われないモデルの起用、スーツ一辺倒だった男性ファッションの改革など、現在の多様性を先駆けた鋭い感性に改めて驚かされる。性別にこだわらぬ恋愛遍歴やセレブリティとの交友関係も興味深いところ。カルダンのデザインの如く、遊び心溢れるカラフルでポップな演出がまた楽しい。
貪欲すぎる天才デザイナーの人生賛歌
御年97歳。じつはイタリア人だった!という、まさかのサプライズに始まり、初めてのメンズコレクション開催やライセンス契約導入など、その功績は服飾関係にとどまらず。ジャンヌ・モローと浮名を流したと思えば、自分の劇場でジェラール・ドパルデューを発掘し、ライヴではアリス・クーパーとやらかす。そんな映画界や音楽界をも巻き込んだ、貪欲すぎるエピソードが出るわ出るわの101分。間違いなくファッション&アパレル志望ならマストといえるが、そんな偉業の数々に加え、バイセクシャルでもある天才デザイナーがぶっちゃけまくる人生賛歌としても楽しむこともできる。
玄関マットのデザイナーと思ったら大間違い!
ライセンス契約の先駆者であり、ハンカチや玄関マットをにロゴが使われているせいでチープなイメージがあったピエール・カルダン。その彼を尊敬すべき存在にする作品だ。今見ても新鮮なコスモ・コールや松本弘子に代表される非白人モデルの起用で一世を風靡し、ファッション界に新風を吹き込む姿がかっこ良すぎる。ジャンヌ・モローとの恋で同性愛の垣根を、プロダクト・デザインや劇場経営でファッションの垣根を飛び越えた。親族や忠実なスタッフに囲まれる姿がちょっとマフィアっぽいが、彼の功績を目の当たりにすると、カルダンこそはまさにクリエイターのドンと納得するはず。