エノーラ・ホームズの事件簿 (2020):映画短評
エノーラ・ホームズの事件簿 (2020)ライター4人の平均評価: 3.8
娘さんと一緒に見たい
謎解きあり、冒険あり、アクションあり、かわいいロマンスありの、楽しいエンタメ作品。平等のために立ち上がる女性たちが背景に出てくるという、フェミニストのメッセージも良い。女性にかぎらず、世の中の変化を求めて多くの人々が行動している今、それはとてもタイムリーだ。エノーラのキャラクターそのものも、今の時代の女性主人公にふさわしい。自分の意思がしっかりあり、頭が良く、勇気があって、男の子に助けられるのではなく、助ける側なのだ。ヘンリー・カヴィル演じるシャーロック・ホームズも、これまでとまた違う魅力がある。家族揃って見るのにおすすめの1本。
自由と平等と若さを体現するエノーラの活躍に胸がワクワク!
シャーロック・ホームズと20歳も年の離れた妹エノーラの大冒険。長男マイクロフトを封建制度の秩序を重んじる権威主義者、次男シャーロックを社会に目を向けず謎解きにしか関心がない高等遊民、そして末っ子エノーラを男社会が勝手に作ったルールに屈しない早熟なフェミニストと位置づけ、古い階級制度が崩れ始めた19世紀末のロンドンを舞台に、行方不明の母を探すエノーラと社会主義思想の若き侯爵が自由と平等のため未来を切り拓く。立ち向かう相手は、国家の名の下に自分らの地位を守らんとする支配階級。メッセージは明白だ。世界各地で社会体制が過去へと逆行しつつある昨今、反骨精神溢れるエノーラの活躍に胸がワクワクする。
シャーロックよりもストレンジャーで面白い!?
レジェンダリーが劇場公開を想定して製作していたとのことだが、それも納得の娯楽濃度。家族の絆から危機へ、コメディ色を強めたと思ったらサスペンスへ、ロマンスの匂いがはてきたと思ったら、またまた危機へ。そんなエピソードのテンポの良さに酔える。
ヒロインがカメラに向かって本音を語る、そんな語りの客観性はクッションのような弾むリズムを生むばかりか、性差の社会的意識にも問いかけ、21世紀の女性映画としても興味深い。
レジェンダリー製作”モンスターバース“の今後のキーパーソンとなりそうなM・B・ブラウンの好演も光る。場面次第で異なる衣装をまとった、彼女の七変化を楽しむスター映画でもある。
原作小説に「フリーバッグ」の味もちょっぴりプラス
シャーロック・ホームズには20歳年下の14歳の妹エノーラがいたという設定の少女向け小説シリーズの映画化なので、可愛い小物も衣装もドラマに絡む美少年もしっかり原作ファン対応。そして、そこからいい意味でちょーっぴりはみ出ているのは、監督がロンドンのアラサーこじらせ女子を描く辛口コメディTVシリーズ「Fleabag フリーバッグ」のハリー・ブラッドビアだから。14歳のエノーラは「フリーバッグ」のヒロイン同様、たまにカメラ目線で視聴者に目配せするのだ。おまけに一家のキャストが超豪華。母はヘレナ・ボナム・カーター、兄はサム・クラフリンとヘンリー・カヴィル。このホームズ兄弟の大人向けスピンオフもぜひ。