眠る虫 (2019):映画短評
眠る虫 (2019)夢心地かつ刺激的な世界観
スタンダードサイズの画角の中で繰り広げられるのは、バスの車内や「風街ろまん」的な終着駅など、箱庭的空間を舞台に死生観を問い直す、不穏かつ夢心地な世界。長編デビューとなる金子由里奈監督が『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』に影響を受けたのも頷けるが、劇場という箱を5.1chサラウンドによる生活音とミニマルミュージックが包み込む多重構造も刺激的だ。渡辺紘文監督演じる謎の乗客など、多くを語らないエピソードも魅力的。哲学的なタイトルや家族写真のようなポスターヴィジュアルからは想像つかない計算し尽くされたトンデモ映画だけに、実父・金子修介監督と異なるフィールドでの活躍に期待したい。
この短評にはネタバレを含んでいます