AWAKE (2019):映画短評
AWAKE (2019)ライター4人の平均評価: 3.8
夢に破れてもそこで人生が終わるわけじゃない
少年時代より将棋のプロを目指しながらも挫折した若者が、自らプログラム開発した将棋AI「AWAKE」をひっ下げ、かつてライバルだった若手天才棋士に挑む。2015年の将棋電王戦FINAL第5局の実話からインスパイアされた物語。良くも悪くも奇をてらわぬ折り目正しい語り口で、同じく将棋を題材にした『3月のライオン』や囲碁×アクションのハイブリッド『神の一手』などと比べると地味な作品だが、しかし人生のセカンド・チャンスに賭ける主人公の執念と情熱には共感するものがある。夢を叶えることが出来る人などほんの一握り。だが、たとえ夢に破れてもそこで人生が終わるわけじゃない。若者にはいくらでも可能性があるのだ。
努力の限界を知り、なお進む者たちの美しき風景
プロ棋士VS人工知能の実話に潜む人間ドラマを探求するという着眼点に加え、それを物語として成立させる創意がお見事。
将棋の道を突き進む者と、挫折してプログラマーとなった者。将棋とAI開発という、本来は交わらないものが“対決”の構図をなす面白さ。そこに因縁や、対象への情熱が絡む。たがいのライバル心がぶつかるクライマックスに熱いものを覚える。
AWAKE、すなわち“目覚め”が意味するもの、それは結局のところ努力の意味ではないか。努力は必ず報われるわけではなく、報われない努力の方が圧倒的に多い。そんな現実への目覚め。それを知ってなお何かに熱中して努力する者の美しさを、この映画は見せてくれる。
今度の吉沢亮は“覚醒”する陰キャ!
人間VS.AIの「将棋電王戦」という題材的は、かなり面白い。しかも、パーカー姿も絶妙すぎる吉沢亮の陰キャなオタ芝居は相変わらず素晴らしいうえ、ライバル役に若葉竜也を配したキャスティングも見事だ。メッセージ性も強いが、2人とも寡黙でクールなキャラということもあり、ただでさえ地味な話が、さらに地味に……。そこを斬新でスタイリッシュと捉えるか、いかにも日本映画的な単調さと捉えるか、で評価は変わるはずだ。個人的には“将棋版『リアル・スティール』”のようなアツさも期待していただけに、どこかSF的な佐藤望の劇伴のほかにも、もうちょいエンタメ要素を用意してほしかった感アリ。
挫折を抱えた吉沢亮はいい!!
『青くて痛くて脆い』『さくら』に続いて挫折と屈折を抱えた吉沢亮はいいと言うことを教えてくれる一本。
完全オリジナル脚本によるAI将棋の可能性を描いた物語ということですが、将棋&棋士映画は外れがなくて面白い確率が高く、本作もまたその例に漏れることなく、気が付けば盤から目が離せなくなります。
大河があるのでしばらく吉沢亮をスクリーンで見れなくなるのは残念ですが、この映画があります!物事を辞めたことに意味があるかもしれないというのはとても励みになるメッセージですね。
若葉竜也、落合モトキ、馬場ふみか、寛一郎と周りを囲む若手キャストも効果的なピースとなっています。