幸せへのまわり道 (2019):映画短評
幸せへのまわり道 (2019)ライター2人の平均評価: 3
ドキュメンタリーとの差別化はできているが...
フレッド・ロジャースについては、2018年に「Won’t You Be My Neighbor?」という優れたドキュメンタリーが作られている。今作は彼でなく、取材で彼と出会う記者を主人公にしたことで差別化できているが、ストーリーはロジャースの人生の話に比べるとかなり弱い。展開はすぐに読めるし、いちいち「泣けるでしょ?」と言われているようで白けるのだ。ロジャースの登場場面も意外に少なく、彼で育った世代のアメリカ人はともかく、そうでない観客には、彼は「良い人なんだろうが変わった人」に見えて終わりになるのではと懸念してしまう。そんな限られた中でも、できるかぎりエッセンスをつかんだハンクスはさすがだ。
いい人の「裏の顔」も見せる、やはりトム・ハンクス、芸達者!
冒頭、レトロな雰囲気のTVショーのセットに姿を現すその人は、ちょっと「変なオジサン」である。アメリカでは知らない人がいない名司会者、フレッド・ロジャース。なじみの薄い日本人にとっては、トム・ハンクスの得意とするピュア&ほんわか系キャラ(フォレスト・ガンプなど)の演技と相まって、一度観たら脳内が支配されるインパクト。子供を相手にして100%、人の良さそうなフレッドが、カメラが回っていないところで見せる一瞬の暗黒面にヒヤリとさせ、このあたりにハンクスの演技巧者テクが発揮されるのだ。とはいえ、ハンクスは助演。フレッドとの出会いで自らの葛藤を乗り越える記者=主人公の目線で観れば、素直な感動作である。