ザ・プロム (2020):映画短評
ザ・プロム (2020)ライター4人の平均評価: 4.3
ブロードウェイが閉まっている今、擬似体験ができる
コロナでブロードウェイがずっと閉鎖している今届けられる、素敵なプレゼント。ブロードウェイスターたちの自虐ギャグでもあり、自分と違う人たちを受け入れようという真面目なメッセージを持つものでもあり。だが、全体を通じてハッピーで楽しいのだ。今作でのメリル・ストリープの歌唱力は過去作品より優れているし、「イントゥ・ザ・ウッズ」でも組んだジェームズ・コーデンとの相性の良さはばっちり。ニコール・キッドマンの見せ場が少ないのがやや残念ながら、それもこれだけの豪華キャストが揃ってしまったからこそだろう。女子高生を演じるジョー・エレン・ペルマンの今後のキャリアにも期待が高まる。
華やかでハッピーでクリスマスの季節にぴったり
派手派手でアゲアゲ、最後にはみんながハッピーになる、まさにクリスマスの季節にぴったりの映画。途中、ミュージカル好きの校長先生が、なぜ自分はミュージカルが必要なのか、なぜ人生にはエンタテインメント作品が必要なのかを歌い上げると、それが素直に当たり前に胸に響く。そして映画の画面は、その主張を実践していく。登場人物たちが語ることをやめ、抱いている夢を歌い上げ始めると、彼らを取り巻く世界が急激に夢のような華やかさを増していく。そうでなくてもかなり装飾的な背景が、さらに華麗さと非現実さの度合いを急上昇させていく。すると、その急激な上昇曲線のカーヴに沿って、見ている方のテンションも上がってしまうのだ。
溢れまくるミュージカル愛+監督らしいテーマへの強い訴求
オリジナル舞台で、何曲かのインパクトと全体の曲のバランスは証明済み。そこに振付や、アングル&編集と、映画版らしい技術を駆使し、本能的テンションを上げる。プロの仕事を実感。
直接セリフが引用する小ネタに加え、『オール・ザット・ジャズ』など間接オマージュにも溢れ、名作ミュージカルへの愛は過剰なほどだ。
「Glee」から一貫するR・マーフィーの多様性アピールは今回、あからさまレベルだが、その極端さがミュージカルのジャンルと美しき化学反応。主人公エマの透き通るボーカルと存在感でドラマも説得力をもつ。M・ストリープのナンバーなど本筋から浮いた印象だが、そうしたシーンの存在も、ある意味ミュージカルっぽい。
「ビバ寛容性!」のメッセージが熱い
LGBTQへの理解度が低いアメリカ中西部で葛藤するゲイの女子高生の物語で、R・マーフィー監督が映画化したのも納得のブロードウェイ・ミュージカル。人気ドラマ『Glee』と似たセッティングだが、演劇界セレブの再生がコミカルに描かれる。あるがままに生きることの大切さや寛容性を持とうというメッセージがしっかりと伝わる。人助けをPRに使おうとする野心的女優をM・ストリープが大熱演していて、圧倒された。『マンマ・ミーア!』より断然いい! N・キッドマンが歌い踊るフォッシー風ソングやA・ラネルによるソンドハイム風パフォーマンスもあり、まさにブロードウェイ賛歌。新星ペルマンの素晴らしい歌声が心に響く。