約束の宇宙(そら) (2019):映画短評
約束の宇宙(そら) (2019)ライター3人の平均評価: 3.7
母親だって自分の夢を追いかけていい
少女時代からの夢だった宇宙飛行士に抜擢されたシングルマザー。女性だって男性と同じように才能を発揮できる、母親だって自分の夢を追いかけることができる。まだ幼い一人娘のお手本となるべく奮闘するヒロインだが、しかし「これだから女性は」と言われないように頑張れば頑張るほど娘との距離が開いてしまい、私は悪い母親なのではないか?と自分を責めてしまう。本格的な宇宙飛行士ドラマでありながら、フェミニズム映画としてもファミリー映画としても成立しているところが秀逸。エヴァ・グリーンの好演もさることながら、嫌味なように見えて実はむちゃくちゃ懐の深いマット・ディロンに思わず惚れる。
宇宙に飛び出す女性が向き合うのは?
社会進出が当然の現代の女性が抱えるジレンマをリアルに描いていて、これぞまさにマミー・ギルト(母親の罪悪感)と膝を打つ。夢に向かって努力してきた主人公サラがキャリアも家庭も完璧にこなそうとする気持ちは側から見ていると痛々しいのだが、同性として納得。母親の事情をわかりつつも寂しさを抑えきれない娘ステラの気持ちもわかるので、母娘の行き違いに胸が痛くなる。ステラと同世代の娘を持つA・ウィンクール監督の細やかな演出が効果を発する。実際に欧州宇宙機構で撮影が行われ、ミッション前のハードな訓練やストイックな生活様式の描写も新鮮だ。最後の最後まで目が離せない仕掛けも用意されていて、感動増し増し。
地上を舞台にしたこの話には多くの女性が共感するはず
宇宙飛行士の実態はとても厳しいもの。家族と長い間離れる悲しみは過去の映画でもたびたび描かれてきたが、シングルマザーが主人公である今作では、そこが最も大きな焦点となっている。夢は絶対諦めないが、娘との時間を犠牲にすることに罪悪感を覚えるサラ。同僚の「旅立つ時はいい。辛いのは戻ってくる時。自分がいなくても時間は流れていたのだとわかるから」という言葉も、彼女の心に響く。圧倒的に男中心のエリート軍団に入っていく彼女は女性差別も体験するし、特訓の辛さに心が壊れてしまいそうにもなる。出てくるのは宇宙飛行士でも、地上で起こることを語るこのストーリーに女性は共感するはずだ。