ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実 (2019):映画短評
ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実 (2019)ライター4人の平均評価: 3.5
誠意と敬意が感じられる
最初は嫌々だった主人公が、人の話に耳を傾けるうちに変化していく、というのは王道パターン。結末も予想通りながら、実在のヒーローへの強い敬意と、誠意ある姿勢が感じられ、素直に感動してしまう。最も心を動かされるのは、今や老人となった元戦士たちが、当時や今の心境をシーン。彼らを演じるサミュエル・L・ジャクソン、エド・ハリス、ウィリアム・ハートらの名演技は、今作を引っ張る原動力といえる。クリストファー・プラマーとピーター・フォンダの最後の作品というだけでも、見逃してはいけない十分な理由。メロドラマの奥には、PTSD、政治の関与、反戦、そして元軍人たちへのケアについてのメッセージも潜む。
生き残った者の慙愧の視点から戦争を描く
ベトナム戦争で仲間を救って戦死したある兵士への"名誉勲章"を巡るドラマを、英雄物語として描くのではなく、その兵士と共に戦争を経験した人々が今も背負う傷と恥の物語として描くところがいい。名誉勲章を巡る物語でありながら、反戦映画になっているのだ。その兵士への名誉勲章を30年以上に渡って請求し続ける人々がみな、昔ながらの誇りと恥の感覚を持っている。彼らは恥ずべきこととは何かを知り、それを恥じ入って苦悩し続けるのだ。昨今の映画で、現代を舞台にしつつ、こうした価値観を持つ人々が描かれるのはかなり稀なのではないか。端役に有名俳優たちが続々出演しているのも、この価値観に賛同したからではないだろうか。
名優の最後の演技が胸に迫る。全体に誠実な作りで見やすい
ベトナム戦争の現場の臨場感、生々しさと、30年後の調査、人間ドラマがうまく配分され、同じ役を別の俳優が演じても誰が誰だかわかりやすい。全体に誠実なドキュメント番組のようなオーソドックスな作りで、生き残った者の贖罪や、トラウマの克服、家族の悲しみを素直に受け止められる作品。アメリカ人にとっての「勲章」への強いこだわりも再認識した。
映画ファンなら思わぬ豪華名優キャストに歓喜し、久しぶりのジョン・サヴェージは『ディア・ハンター』を重ねたくなる役どころに感激。ピーター・フォンダ、クリストファー・プラマーの遺作となったが、とくに後者の名演技は、作品での運命とともに静かに胸を揺さぶってくるのは確実。
ずるい映画
テーマからしたら、もっと突っ込んで描けたのではないかとか?ラストがあまりにもベタじゃないかとか思わなくもないですが…。
故ピーター・フォンダ、故クリストファー・プラマー、エド・ハリス、ウィリアム・ハート、そしてサミュエル・L・ジャクソンという豪華すぎる面々が要所要所で出て来られては見ている側としてはやられてしまいます。主演のセバスチャン・スタンの熱演も忘れ難いものがあります。マーベル経由で俳優たちが大きな企画にかかわるようになりましたね。ハリウッドフランチャイズでは意外とない流れなので大歓迎です。