アーミー・オブ・ザ・デッド (2021):映画短評
アーミー・オブ・ザ・デッド (2021)ライター4人の平均評価: 3.5
オープニングが最大の見どころ!
『新感染半島』に先を越された感もあるプロットだが、ザック・スナイダー監督が“ゾンビ版『ニューヨーク1997』×『エイリアン2』”をやりたかったのは、よく分かる。しかも、監督の亡き愛娘への想いが詰まった父の葛藤も盛り込んでの148分だけに、妙な大作感アリ。とはいえ、ベガスを舞台にしながら状況設定を生かせてないし、多種多様なゾンビは魅力に欠ける。そのうえ、肝心のドラマが描かれておらず、クセモノたちが命を落としても、どこか呆気なく、カタルシスを感じられない仕上がりに。ある意味、このテが十八番なデヴィッド・エアー監督なら、どう撮るか?という観方もあるが、とにかくオープニングが最大の見どころ。
ザック・スナイダー流『新感染半島』!?
ゾンビ・パンデミックの発生で都市封鎖され、陸の孤島と化したラスベガス。そのカジノホテルに眠る2億ドルを盗み出すため、金で雇われた精鋭チームがゾンビの群れのど真ん中へと乗り込んでいく。プロット自体は『ニューヨーク1997』や『新感染半島 ファイナル・ステージ』の焼き直しと言えるが、彼らを待ち受けるのが高度な知性を持ち俊敏に動く進化型ゾンビ集団「アルファ」ってところがミソ。タフなクセモノばかり揃った登場人物や、痛快感の中にも悲壮感の漂うエモーショナルな展開などはザック・スナイダーらしいテイストだが、親子愛などの人間ドラマを潔く削ってコンパクトな尺にまとめた方がスッキリしたようにも思う。
ザック・スナイダーが描くと、ゾンビがカッコイイ
ザック・スナイダー監督が描くと、ゾンビがカッコイイ。逆光で出現して、光のフレアや虹色の光の帯を身に纏うのは、人間ではなくゾンビ。風にたなびく半透明のビニールシートの向こうからまず影を見せてから姿を現し、この監督の『マン・オブ・スティール』の情景を思い出させるのも、人間ではなくゾンビ。ゾンビたちが集結するホテルの名称が、ギリシャ神話の十二神が集う山と同じオリンポスで、その看板が何度も映し出され、彼らこそが新たな神々であるという主張すら感じさせるのだ。一方で予想以上に人間ドラマもたっぷり。オープニングタイトルの背後にゾンビ化したラスベガスの過激シーンが大量投下されるので、そこもお見逃しなく。
ツカミ最高。ゾンビ映画+強盗大作戦でスナイダー本領炸裂です
ゾンビ大量発生のラスベガスが隔離されてる設定だが、ここに至るまでをオープニングで一気に展開。それだけで一本の映画になるほどの“凝縮映像”に驚き! 最初にハートを掴まれたら、死をも恐れぬ勇者どものカウントダウンの攻防に素直に没入。ゾンビ対決に加え、金庫破り作戦のサービス精神が注入され、武闘派の中の唯一の頭脳担当がスパイスになるなど、誰が生き残るか予想できないキャスティングも効果的だ。
何ヶ所か謎の展開や停滞はあるものの、ジークフリード&ロイのトラを従えたラスボスなど、要所の絵柄に惚れぼれ。えげつない描写は容赦なく、見せ場のアクションは美しく、と監督の原点テイスト、今回は存分に発揮できたのでは?