彼女が好きなものは (2021):映画短評
彼女が好きなものは (2021)ライター2人の平均評価: 3.5
「ドラマ版」に負けず劣らずの仕上がり
欧米などのLGBTQ作品と比べると、日本映画界の遅れも感じさせる内容に見えてしまうが、先立って映像化されたドラマ「腐女子、うっかりゲイに告る。」に負けず劣らずの仕上がり。しっかり観客に訴えかけてくるうえ、終盤の見せ場となる全校集会での演説シーンも見応えアリ。重要なキーワードとなるクイーンの楽曲使用については残念極まりないが、「ドラマ版」の藤野涼子とは若干違うアプローチでヒロインを演じた山田杏奈は、『ひらいて』よりも魅力的。さらに、親友役の前田旺志郎がいい。それに対し、後に嫌悪感丸出しになるイケメンキャラがミスキャストなうえ、ゲイリー芦屋による劇伴の妙なダサさもあり、★マイナス。
好きになってやっとわかったこと
恋をしないとわからないことが多いぞというお話。
センシティブな題材ではありますが、草野監督の軽やかさを感じる演出と主役の神尾楓珠、山田杏奈の好演もあって、重さを感じさせすぎないのが好感をもてます。
青春劇で、初めての出来事の物語だと、”思い”が強くなりすぎて空回りしたり、変に尖ったりすることもありますが、この映画は絶妙なバランス感覚で成り立っています。周囲の人たちもクセはあるけど悪い人はひとりもいなくて、こういう人間関係を見ていると羨ましくもなります。クライマックスの全校集会で美味しいところを全部持って行った三浦獠太の名前と顔を覚えておきましょう。