海辺の家族たち (2016):映画短評
海辺の家族たち (2016)ライター2人の平均評価: 3.5
故郷も家族も、それを必要とする者たちのためにある
地中海を望む美しい田舎町、倒れた高齢の父親を見舞うため20年ぶりに兄妹が集まる。思い通りにいかない人生、消し去れぬ過去のわだかまり、壊れかけた家族の絆。懐かしい故郷も今ではすっかり寂れ、南仏の眩しい太陽のように輝いていた青春の日々も、愛する家族や友人たちがそこに生きた証も、もはや永遠に失われようとしている。そんな時、兄妹は紛争地帯から逃げ延びてきた難民の子供たちを発見し、幼い彼らを守るために心をひとつにしていく。故郷とはなんなのか、家族とはなんなのか。それは土地との繋がりでも血の繋がりでもなく、それらを必要とする人々のものではないか。地方の過疎化が進む日本でも他人事とは思えない物語だ。
失っていくものと、守るべきもの
ときに優しく、ときに厳しく、労働者の視点から市井の人々を描いていることから、“フランスのケン・ローチ”と称されるのも納得なロベール・ゲディギャン監督作。本作でも故郷であるマルセイユの港町を舞台に、予期せぬ出来事に巻き込まれる主人公たちが淡々と描かれる。続投したキャストやテーマなど、『キリマンジャロの雪』との共通項も見られるが、今回キーパーソンとなるのが“難民”というのがミソであり、バラバラだった家族の絆を繋ぐ存在に。失っていくものと守るべきもの、人生について考えさせられる、恐ろしく地味なドラマだが、船着き場や入り江、高架下といったロケーションの素晴らしさは、さすがの一言。