あの夜、マイアミで (2020):映画短評
あの夜、マイアミで (2020)「逆算的想像力」を働かせる
先日のアカデミー賞のMCが印象的だったR・キングの初監督映画。史実に着想を得たとはいえ“ifもしも…”の思考実験に近い。アフリカ系米国人のアイコン4人を集めたドリームマッチ的議論。共振点の多い『シカゴ7裁判』が自由な脚色だとしたら、こちらは再構築。ディテールなどかなり大らかだが、BLMに繋がる論点を抽出し凝縮した優秀な「縮図」。
ネイション・オブ・イスラムを巡る見解の相違でまず顕在化するように、「友人」4人の思想的立場には段差やグラデーションがある。急進派マルコムXと穏健派サム・クック――当初「対立」軸に置かれる2人が共にこの物語のすぐ後(64~65年)に不測の事態で死去している事実が重い。
この短評にはネタバレを含んでいます