恋の病　～潔癖なふたりのビフォーアフター～ (2020)：映画短評

当人以外にはなかなか理解されにくい脅迫性障害を抱えた男女がひょんなことから出会う。破れ鍋に綴じ蓋、というか運命！　恋に落ちるしかない設定だが、「二人はずっと幸せに暮らしましたとさ」で終わらない男女関係をコミカルに描きつつ、切なさも漂わせる。対面通行だった恋もいつかは一方通行に変わるのだ。人間だもの。『アメリ』を意識したと思わせるキャラ設定やインテリアはキュートだし、カラーパレットの使い方も印象的。iPhoneで撮影したと後から知っていつも驚くが、画像は実に美しい。技術の進歩、すごいな。二人が出会う頂好超市やＭＲＴ松山線での撮影も台湾好きなら「どこ？」と目が釘付けだろう。

　恋に落ちた潔癖症の２人。彼らが住んでいる世界は、画面のスミまでポップでカラフルな色彩とデザインで、２人が着る雨ガッパやビニール手袋の色までキュート。そんな世界に相応しく、２人の動作も、様式化されたダンスのような形を描く。そんな世界でちょっと変わった２人のキュートでファニーなラブコメがたっぷり楽しめるのだが、それだけではなく、それがいきなりシリアスな物語に変貌し、すると画面の色彩やテイストも変わっていくのが、この映画のユニークなところ。カップルの片方が変わってしまったとき、もうひとりはどう行動したらいいのか、そしてビョーキとは何なのか、その治癒とは何なのか、そんな問いまで投げかけてくる。

潔癖症＜＜＜強迫性障害な2人が運命的な出会いを果たす、ポップでキュートで風変りなラブコメ。『ナイト・オブ・シャドー 魔法拳』『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』などの大作では、トップスターの存在感に押され、個性がなかなか発揮できない感のあったリン・ボーホンだが、今回は共演経験もあるニッキー・シエとの息の合った掛け合いが笑いを誘うことに。コロナ禍に完全武装で外出する2人を観ることは興味深いが、肝となるのはiPhoneを用い、一気に世界が広がる撮影や編集だ。ただ、普遍的なラブストーリーとして着地してしまうことで、原題の「怪胎（変人）」を期待してしまうと、やや肩透かしを食らうかもしれない。