かば (2021):映画短評
かば (2021)ライター2人の平均評価: 3.5
部落や在日問題にも切り込む群像劇
タイトルから想像される“問題児たちと正面から向き合った、かば先生の奮闘記”というよりも、臨時教員として赴任してきた女性教諭ら、教師たちのお仕事映画であり、西成や鶴橋を舞台にした群像劇。川本貴弘監督の取材力もあり、日常のリアルな描写が綴られており、オーディションを勝ち取った元NMB48近藤里奈演じる卒業生のエピソードなど、部落や在日問題にもしっかり切り込んでくる。しかも、「じゃりン子チエ」こと中山千夏も、餃子屋の店主で登場! まさに井筒和幸監督作のような泥臭さを感じられるが、演出的にはかなり古臭く、これといったサプライズはない。そこが賛否分かれるところといえるかもしれない。
真摯さに胸打たれる
金八先生 meets 井筒和幸……むしろ感触は『キューポラのある街』(浦山桐郎)に近いか? 「この学校にはな、部落か在日か沖縄しかないんや!」との問題意識を浮上させつつ、どこまでも優しくハートフルに「教育」の見地から融和と相互理解の可能性を探る。
時代は1985年。『じゃりん子チエ』の「西荻」のモデルとしても知られる大阪・西成が舞台だが、決して泥臭さ一辺倒ではない(ラジオはシティポップを流し、転校生リョウタはARBを聴き「CBGB」のロゴT着用)。そこは川本貴弘監督(73年京都生)の同時代的な記憶の優位性か。役者陣も素晴らしい。主演の山中アラタはもちろん、新任の加藤先生役・折目真穂が抜群!