オールド (2021):映画短評
オールド (2021)ライター2人の平均評価: 3.5
じつは哲学的で奥深い
いかにもシャマラン映画らしい一発ネタ設定に見えるが、『ビバリウム』にも似たシチュエーション・スリラーとしての面白さがあるだけでなく、「老い」や「人生」について切実に考えさせられるなど、じつは哲学的で奥深い一本。しかも、未来にこだわる夫と過去にこだわる妻などのキャラ設定に加え、“現代のヒッチコック”と称されていたことも思い出すシャマラン監督の近年ベストといえるサスペンス演出が冴えわたる。前半で、明らかにネタバレに繋がるセリフを出してしまうことは悔やまれるところだが、『ジョジョ・ラビット』では、あんな幼かったはずのトーマシン・マッケンジーの“成長の速さ”には驚くばかり!
衝撃の設定+人生の普遍ドラマ、というシャマランの狙いどおり
急速に老化するビーチという「設定」だけで過剰にソソられ、その変化をどう映像化するかで、基本的にアナログ(に見える)手法を駆使した演出が、映画少年の心を忘れないシャマランっぽくて愛おしい。演じた役も監督の役割そのもので笑える。
要所に突然、怪しい人物、ショッキングな事件、おぞましい姿を挟み込むスタイルも、シャマランが観客の期待に応えている印象。
急速な時間進行が肉体に与える影響で、驚きのネタの宝庫という内容だが、当然のごとく「残された人生をどう過ごすか」という切ないドラマもせり出してくる。よく考えれば映画というのは2時間で一生を描くことも多く、ある意味、本作の設定は過分に「映画的」ではないか。