夢のアンデス (2019):映画短評
夢のアンデス (2019)チリの軍事独裁政権が遺した深い傷跡
雄大なアンデス山脈の厳しくも美しい光景に、祖国チリへ対する監督の愛情を投影しつつ、軍事独裁政権が崩壊してから30年以上を経た今もなお、チリ社会に残る深い傷跡を静かに見つめていくドキュメンタリー。大勢の一般市民を虐殺した「戦犯」たちの多くが反省することなく権力の座に留まり、体制側に阿る経済学者が先導した新自由主義経済が格差社会を固定してしまった。スマホなどテクノロジーの発達によって表層的には平和で豊かだが、しかし社会の本質は独裁政権時代とあまり変わっていない。そんなチリの現状を憂う監督の視点に深く共感できるのは、恐らく日本社会の今との共通点が少なくないからだろう。
この短評にはネタバレを含んでいます