愛なのに (2021):映画短評
愛なのに (2021)ライター2人の平均評価: 5
後輩からのバトンを握り、快走を見せる先輩!
城定秀夫×今泉力哉コラボレーションという好企画の第1弾。いきなり河合優実演じる高校生・岬が夢野久作の『少女地獄』を万引きして全力で走る! 城定監督ならではの効率的な語りとスラップスティックな運動性で、脚本担当の今泉節が展開する妙味。『mellow』的な告白シチュエイションを援用しながら、「好き」をめぐる生真面目な考察が思わぬ熱量の高さで爆発する。
瀬戸康史に、さとうほなみ(a.k.a.ゲスの極み乙女。ほな・いこか)、エロいウェデングプランナー役の向里祐香、勇ましい丈太郎などキャストの素晴らしさも瞠目。とりわけ濱口竜介の『偶然と想像』に引き続いて、クズイケメンの可笑しみを醸し出す中島歩が絶品!
これぞコラボの成功例!
R15+指定を前提にしたコラボ企画「L/R15」だけに、瀬戸康史が持つ色気を引き出した城定秀夫監督らしい濡れ場は、まさに見どころのひとつ。とはいえ、『街の上で』の延長線上にも見える古本屋を舞台にし、登場人物のベクトルが決して交わらない“全員片思い”な脚本を書いた今泉力哉監督のテイストはかなり濃厚。一方で、今泉監督作では見られない躍動感あるカメラワークなどもアクセントになっており、これぞコラボの成功例といえる仕上がりといえる。『偶然と想像』に続いて、“モテ男なのに”な役柄を演じる中島歩を筆頭に、とにかく笑わせてくれる一本でもあり、今年も絶好調な河合優実の新たな魅力に、★プラス!