ドント・ルック・アップ (2021):映画短評
ドント・ルック・アップ (2021)ライター4人の平均評価: 4.5
贅沢すぎるキャストが、世界の終わりを見届ける!?
半年後に、巨大な彗星が地球に墜落するディザスタームービーの形を借りた、“アダム・マッケイ監督版『博士の異常な愛情』”。天文学者のレオがTVキャスターのケイト・ブランシェットと浮気し、やけっぱち状態なジェニファー・ローレンスを口説くティモシー・シャラメら、贅沢すぎるキャストに、畳みかけるセリフと編集、政界や企業、マスコミに対するブラックな笑いと、相変わらずのマッケイ節だ。コロナ禍前なら「んなアホな!」と笑い飛ばせるが、今観ると妙に真実味を帯びてくる怖さ。そんな身近なテーマのほか、『エンド・オブ・ザ・ワールド』にも似た後半の展開など、マッケイ作品にしては万人向けといえるだろう。
環境問題の脅威をこんなに面白く語るとは
地球温暖化をそのまま語ると脅威が迫るのに時間がかかりすぎるので、半年後に彗星が地球にぶつかるという設定にしたのは賢い。その事実を早くに知らされているのに、儲からないし面白くない話だからと何もしない大統領は、コロナ初期のトランプそのもの。その役を、トランプに「過大評価された女優」と言われたメリル・ストリープに演じさせたのは痛快。タイトル自体も、コロナは「いつかミラクルのように消える」と目を背けようとしたトランプを思い出させる。思いきり笑わせてくれつつも、容赦ないラストに強いメッセージが。企業の欲、メディア、社会の分断などにスマートに触れる、アダム・マッケイならでは手腕に拍手。
基本は人類絶滅パニック。なのにこんなに楽しんでいいの!?
明らかにヒラリーを意識したようなアメリカ大統領役のメリル・ストリープを筆頭に、実力お墨付きのオールキャストが、やや大げさな部分はあるとはいえ、イカニモなキャラに乗りうつっての怪演。その競い合いに、うれしい驚きが続く。
彗星激突カウントダウンというパニックムービーなのだが、それ以上にホワイトハウスや大企業の信じがたい(たぶん)実態が強烈なインパクトで突き進む。そして基本はコメディなので、最後の最後まで登場人物の極端な行動を笑いながら楽しめてしまうのだ。あくまでもリアリティ重視の、『マーズ・アタック!』的なノリという感じ。終盤の展開は観る人によって賛否が分かれそうだが、そこも監督の狙いだろう。
アダム・マッケイ監督のブラックな味が冴え渡る
これが、今、私たちが生きている世界の状況であることを突きつけられる。恐ろしいが目を背けるわけにも行かず、コメディの形になっているのがありがたい。監督・脚本は『マネー・ショート 華麗なる大逆転』でリーマンショックの裏の金融界の異常事態をブラック・コメディに仕立てて見せたアダム・マッケイ。今度の舞台は金融界ではなく地球全体なので、新型コロナウイルスや環境問題により人々が地球全体を一つのものとしてとらえるようになった現在、ドラマがさらに身近に切迫。監督のブラックな味が冴え渡る。そんな物語にレオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、メリル・ストリープら大物俳優たちが大挙出演している。