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モスル~あるSWAT部隊の戦い~ (2019):映画短評

モスル~あるSWAT部隊の戦い~ (2019)

2021年11月19日公開 102分

モスル~あるSWAT部隊の戦い~
(C) 2020 Picnic Global LLC. All Rights Reserved.

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.4

なかざわひでゆき

生まれ育った故郷の街が戦場となった者の怒りと哀しみ

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ハリウッド映画でありながらセリフは全てアラビア語という異色作。第二次世界大戦以来の激戦と言われたイラクの都市モスルの市街戦を舞台に、ISISの支配と弾圧に抵抗するイラク軍SWAT部隊の実話が描かれる。外側ではなく内側の目線でイラクの戦場を捉えた作品は珍しい。ただしこの部隊、本部の命令に無視した特別な任務に当たっており、何も知らずチームに加わった若い元警官の視点から、その極秘任務の意外な真相が詳らかにされていく。浮かび上がるのは、生まれ育った故郷が戦場となってしまった者たちの激しい憤り、そこにあった家族や友人との平和な暮らしを奪われた彼らの深い哀しみ。戦争の理不尽を目の前に突きつける力作だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

これがアメリカ映画とは驚くしかない

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

ISISの蛮行によって地獄と化したモスルでSWAT部隊が激しい戦闘を繰り広げていたとは驚きだ。躊躇なく敵を殺害し、武器や紙幣など使えるものを死体から奪う姿はISISと変わらなく思えるが、その心情が大いに違うのが徐々にわかる。主人公はSWATに救われ、半ば強引に仲間入りさせられる新米警官で、観客も彼目線でSWAT隊員たちの思いや強さを汲み取り、心を寄せていく展開だ。次々と人命が奪われ、家族が崩壊する様子から伝わる戦争の現実が心底恐ろしい。鑑賞後に、ルッソ兄弟がプロデュースしたアメリカ映画と知った。スター起用でヒットを狙わず、徹底的にリアリティを追求できるのだからハリウッドは懐が深いな。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

正義や大義も消えていくカオスに、現場の一員として没入する

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

冒頭からいきなり、緊迫の銃撃戦のさなかに放り込まれる。この感覚は、近年の戦争アクションの常套手段。その後もカメラがSWATのメンバーの視点で駆け巡ったりするので、戦場への没入レベルは高い。
ISIS(イスラム過激派組織)と、SWAT、警察官の関係、つまり敵と味方が混沌とした部分もあり、それが作品全体のカオスにつながり、イラクの非情なリアルを体感させていく。正義や大義のない世界に呆然となるのは確実だ。
さらに、中心人物である新人警察官が、これまた真意がどこにあるかわからず、俳優の演技もその奥の奥を想像させ、カオスを増長。これを顔なじみの俳優が演じていたら、作品の方向性が予定調和になっていたかも。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

中東問題をエンタメとして昇華

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

ルッソ兄弟プロデュースによるアメリカ映画ながら、米軍やFBIなどは登場せず、全編アラビア語によって物語が展開していく異色作。まるでSWAT部隊に密着しているような臨場感を生み出すマウロ・フィオーレによる撮影の下、半ば強引に徴兵され、当初は正義にこだわっていた主人公の心情が次第に変化していく恐ろしさが描写されていく。濃密な市街戦アクションやできるだけ宗教要素を薄くすることで、中東問題をエンタメとして昇華。彼らの任務目的が最後に明かされる仕掛けも用意されており、『キングダム/見えざる敵』の脚本家マシュー・マイケル・カーナハンの監督デビュー作といえば納得の仕上がりといえる。

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平沢 薫

その隊員たちが貫こうとする"任務"とは何なのか

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 乾いた埃の舞う戦場で、人間がどんどん人間を殺していく。そして、次から次へと殺されていく。ただもう殺し合うので、それが何のための行為なのかが見失われていくのだが、あるSWAT部隊には隊員全員が強い信念を持って貫こうとする"任務"があった。それは果たして何なのか。
 監督のマシュー・マイケル・カーナハンは『21ブリッジ』『消されたヘッドライン』『キングダム/見えざる敵』等の脚本家で、本作が初の監督作。脚本も彼自身が手掛けており、実話に基づく戦争映画でありつつ、謎解きでも引っ張るストーリーにもなっている。そしてその謎が解明されたとき、その答に驚かされ、同時に深く胸を打たれる。

この短評にはネタバレを含んでいます
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