再会の奈良 (2020):映画短評
再会の奈良 (2020)日本社会の見えない壁に阻まれた異邦人の孤独
日本へ帰国して新たな人生を始めたはずが、いつの間にか消息不明となってしまった中国残留孤児の女性。心配のあまり訪日した中国人の年老いた養母が、奈良に住む義理の孫娘と日本人男性に助けられて手掛かりを探す。その過程で徐々に明らかとなるのは、地域に溶け込もうとしても受け入れられなかった女性の哀しい運命だ。親切なようで実は排他的な日本社会。その見えない壁に阻まれた異邦人の孤独に寄り添いつつ、言葉や習慣の違いを超えて互いを思い遣る養母ら3人の姿にささやかな希望の光を見出す。他者への無関心や異質な者への偏見が広がり、社会から優しさが失われつつある昨今、考えさせられる点の多い作品だ。
この短評にはネタバレを含んでいます