ザ・ロストシティ (2022):映画短評
ザ・ロストシティ (2022)ライター4人の平均評価: 3
逆に評価したいアホさ加減
“サンドラ・ブロック版『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』”ながら、いきなりトンデモ展開にもなる『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』感もあり、とにかく豪華キャストとスピーディーな展開で、観客を飽きさせないことに徹した一本。どこか懐かしさも感じるなか、知る人ぞ知るモデル、ファビオ・ランゾーニを徹底的にパロったチャニング・テイタム演じるポンコツキャラが、意外と真面目だったことに驚き! そして、スパンダー・バレエなどの楽曲センスに、今やカルト俳優になりつつあるダニエル・ラドクリフの安定すぎる悪人っぷりにニンマリ。観た翌日に、何も覚えていないアホさ加減は、逆に評価したいところだ。
忘れかけていたハリウッド映画のノリをもう一度!
トップクラスのスターが華々しく共演し、世界の果てで派手な冒険を繰り広げる。現在のハリウッド大作の流れにのっとれば、やや“過去の遺物”的なノリを、いい意味で恥ずかしげもなく突進するところが爽快な一作。こういうの、たまに観たくなる…という見本。
伝説の古代都市を探す攻防は、あくまで二の次として、俳優たちの「あまりにイメージぴったりな演技」と「イメージ裏切る暴走」の絶妙なバランスで楽しませ続ける。彼らの割り切った仕事っぷりに、唖然のギャグにも素直に笑ってしまう感じ(誉めてます)。
ハラスメントになりそうな危ういネタもギリギリ回避。相手の知性に興奮する「サピオセクシュアル」という単語は新鮮だった。
2022年らしさのある、王道の冒険映画
「アフリカの女王」、「ロマンシング・ストーン」、また最近の「ジャングル・クルーズ」を思わせる王道のアドベンチャー映画。だが、主演女優が主演男優より16歳も上ということと、男がヒーローとはほど遠く使い物にならないというところが2022年らしい。そしてこのふたりの男女の相性は、ばっちり。エゴを捨てておバカなシーンを徹底的におバカにやるサンドラ・ブロックとチャニング・テイタムが、終始笑わせてくれる。カメオで登場するブラッド・ピットは、髪型やどんなタトゥーを入れているのかとかなど、キャラクターに自分のアイデアをたっぷり持ち込み、アドリブも多数やったそう。ピットが主演するコメディも見てみたい。
サンドラ、チャニング、ブラピがたっぷり笑わせてくれる
サンドラ・ブロックのコメディエンヌぶりは予想通りの楽しさだが、チャニング・テイタムが思った以上のハマリぶり。そして、こんなにコメディがイケたのかと驚かせてくれるのが、カメオ以上にしっかり出演しているブラッド・ピット。下ネタ系の下世話なギャグも少なくないのだが、イヤな感じにならずに笑わせてくれるのは、この人たちのセンスによるものなのかも。
モチーフであるロマンス小説は、笑いのネタではなく、それが象徴する娯楽至上主義作品を全面的に肯定するのが、本作のスタンス。テイタム演じる表紙モデルが、自分の仕事に意義を見出した経験を語るシーンがあり、そこできっちり意見表明している。