ある職場 (2020):映画短評
ある職場 (2020)湘南・江ノ島の潮風の匂いと、苛烈な密室討論会
ジャック・ロジエ的なバカンス映画のルック&ムードから始まり、セクハラ事件の後日談に展開。舩橋淳監督が「ディベート映画」と呼ぶように、各々のキャラ設定に立脚した演者達の「生の言葉」で有機的に劇が組成された(役の苗字は往年の松竹映画人から!)。劇映画とドキュメンタリー、演技/非演技の中間帯に可能性を探るハイブリッドのスタイルが驚くほど巧くいっていると思う。
日本的リアルの点で特に生々しいのは、判りやすく有害な男らしさと認定されるマッチョイズムではなく、一見軟弱な中の男性性が現われてくること。「ある職場」の物語としては舩橋が手掛けたNMB48の『道頓堀よ、泣かせてくれ!』とも通底する主題が多い。
この短評にはネタバレを含んでいます