ロストケア (2023):映画短評
ロストケア (2023)ライター2人の平均評価: 4
誰もが無関係ではいられない厳しい現実を突きつける力作
42人もの要介護老人を殺害した訪問介護士を、有能なエリート女性検事が法の下に追及していく。いかなる理由があろうとも殺人は許されないし、そもそも他人に誰かの生き死にを決める権利などない。女性検事の怒りはごもっともだが、しかし高齢化社会の日本で介護負担を苦にした殺人や無理心中が後を絶たないこともまた事実。「国が救おうともせず、自己責任として見捨てた人たちを救った」という犯人の主張にも、悔しいかな一理ある。ますます問題は深刻化すること必至なのに、今なお政府も国民も当事者とその家族に解決を押し付けている。これはその罪を厳しく糾弾し、我々が現状とどう向き合うべきなのか、その覚悟と決断を迫る作品だ。
静かなで気持ちの悪い松山ケンイチ
久しぶりに気持ちの悪い松山ケンイチを見ることができるスリラー。意外にも初共演の長澤まさみとの演技合戦が楽しいです。二人とも身体能力の高い役者さんですが、今回はそれを封印して”静の演技合戦”を展開します。他のキャストと絡むシーンもあるのですが、基本的には二人の会話芝居で、舞台劇のように感じる部分もありました。前田哲監督はどちらかというとコメディ畑の人だと思っていましたが、こういうテイストも行ける人なんですね、もっとこのジャンルでも見たいと思いました。絶対に肯定できない事柄ですが”じゃあ、あなたはどうするのですか?”と静かに問いかけられるような映画です。