イントロダクション (2020):映画短評
イントロダクション (2020)「定型」から果てしなく遠い映画=人生
ホン・サンス最短の66分。冒頭に出る(劇中設定の時制ならぬ)製作時期を示すテロップから規格外の衝撃が続く。ブニュエル的幻想の歪みも湛えながら、総合的にはジャームッシュの『ストレンジャー・ザン・パラダイス』を初めて観た時の様な気持ちになった。三章仕立てのモノクロームの青春。時間は経つし場所も変わる。何か起こると思ったけど、何も起こらない。あるいは既に起きてしまった事だけが淡々と語られる。
伏線やその回収といった「綺麗な嘘」の徹底拒否。人生、introductionだけで終わることだらけだ。フィクションとしての映画を根底から問い直すこの傑作に、脚本賞を与えたベルリン国際映画祭の慧眼と英断に感服!
この短評にはネタバレを含んでいます