ソー:ラブ&サンダー (2022):映画短評
ソー:ラブ&サンダー (2022)ライター4人の平均評価: 3.8
予習も必要なく観れるサービス精神がうれしい
マーベル+ロックオペラの作りで、ソーのキャラクターをこれまで以上に決定づけた感触。「エンドゲーム」の騒乱や、ぽっちゃり体型になった経緯まで、ソーのこれまでを軽やかにテンポよく振り返る冒頭で、しっかり記憶整理できてありがたい。このシークエンスの選曲がこれまた絶妙。
ただ監督の笑いのセンス、および笑いの余計さは、そのたびに物語にブレーキがかかる印象もあり、好き/嫌いが分かれそう。そうした全体のムードの中では、クリスチャン・ベールが彼らしい憑依演技で不気味の極みともいえる悪役を表現しつつも、むしろラッセル・クロウの狂言回し的なゼウスの方が脳裏にやきついた。ラブストーリーは感傷的にならずマイルド味。
“愛と雷”はユーモアとともに伝説となる!
前作『~バトルロイヤル』に続いてT・ワイティティが監督を務めるとなれば、コミカル路線は継続必至。冒頭こそシリアスだが、ソーが出てくるやユーモアが随所に炸裂し始める。
アスガルドの子どもたちに語られるソーの伝説……という体。伝説ゆえの脚色からユーモアがにじむ。前作でもレッド・ツェッペリンの曲がイイ味を出していたが、今回はガンズ&ローゼズのヒット曲を多数フィーチャー。ソーの豪快キャラにはハードロックが良く似合う。
もちろん笑えるだけではなく、感情に迫るエピソードもある。元カノ、ジェーンとの恋の再燃はドダバタ含みも、味のある展開。N・ポートマンの、円熟味を増した“女優の顔”に唸った。
シンプルイズベスト
スパイダーマンNWH、ドクター・ストレンジMoMで日本でも勢いを取り戻した感のあるMCU最新作。タイカワイティティが参加したところから、この豪快な雷神様が輝き出しましたね。
そして、観てみればタイトル通りラブとサンダーだけでできたラブファンタジーアクションコメディでした。シンプルイズベストです。
とかく重くなりがちなMCUを気持ち良く明るく軽い方向に力ずくで持っていってくれました。
そしてそして、キャラも、物語も盛りだくさんなのに上映時間119分にまとめ切ったのもお見事です。
極彩色で思いっきりコメディで楽しい
極彩色で派手かつ笑える。設定だけ見れば、かなりシリアスな出来事もあり、いい話も泣ける話もあるのだが、思いっきりコメディ方向に舵を切って、楽しい話に持っていく。そこでバランスを取るために、シリアス系俳優クリスチャン・ベイルが投入されたのかもしれないが、彼が演じるゴアも、あっさりこの世界の住民になってしまっているんだから、タイカ・ワイティティ恐るべし。
もう一つ楽しいのは、音楽が選曲も使い方も『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』仕様なこと。オープニングのマーベルのテーマもそういう編曲。なるほどソーはルックスからしてこの系の音が似合いそうだが、監督の趣味なのかもと思うとそれも楽しい。