千夜、一夜 (2022):映画短評
千夜、一夜 (2022)“待つ”という行為の残酷
愛する者の“失踪”に直面した人間の心的な葛藤をクローズアップ。その痛みや苦しみが、丁寧な語り口から生々しく伝わってくる。
北朝鮮拉致問題の、ある意味最前線である佐渡島を舞台にしているが、それは主人公たちが求める失踪のひとつの“理由”として機能。社会派に偏らず、あくまで待つ身の辛さにドラマの軸を置く。
愛する人と再会する“夢”という概念をまじえながらも、ドキュメンタリーを思わせる観察的な映像が生き、語り口は徹底してリアル。比較的高年齢のキャストにも過疎の地方都市の現実が見えてきて、やるせない気持ちになった。重い。しかし、確実に歯応えがある。
この短評にはネタバレを含んでいます