ビースト (2022):映画短評
ビースト (2022)ライター3人の平均評価: 3.7
丸腰で猛獣に立ち向かうオヤジがスゴい!
製作陣は“ライオン版『クジョー』を目指したとのことだが、それも納得。狂獣の出現以後は緊張の場面が、ひたすら続く。
主軸のサバイバルに親子の葛藤や、密猟問題を絡め、それ以外の無駄はいっさい省いたソリッドな作り。シンプルではあるが、アフリカの風景のとらえ方を含め、それゆえの力強さが大きな魅力となっている。
子育てに少々問題のある父親を演じつつ、娘たちを守るための死闘を体現したI・エルバの熱演は断然、光る。クライマックスのライオンとのガチ対決はCGI技術の凄さとともに目を見張った。
ド直球な“ライオン版『ジュラシック・パーク』”
イドリス・エルバ演じる主人公の愛娘が、ロゴTシャツを着ているシーンが物語っているように、製作陣が目指したのは明らかに“ライオン版『クジョー』<<<『ジュラシック・パーク』”。『エベレスト3D』など、サバイバルものを得意とするバルタザール・コルマウクル監督だけに、あえて長回しで緊張感を高める演出は効果的かもしれないが、クルマを襲撃されるパニック描写やシャールト・コプリー演じる生物学者の扱いなど、かなり既視感強め。また、いかにも『ランペイジ 巨獣大乱闘』の脚本家らしい展開もあるが、全体的には弱い。『ジャングル・ブック』から5年余り、さらに技術が向上したCGに、★おまけ。
このVFXは本当にスゴい! 余計な方向に逸れない展開も爽快
人間への敵対心からモンスターと化し、容赦ない攻撃を仕掛けてくるライオンは、アクション映画における最強の相手として全編に君臨する。人間たちの頭脳戦、幸運/悲運もつるべ打ち状態で、パニック映画として本筋から一切ブレない作り、潔いまでの清々しさ。アフリカでの密猟という社会派テーマもあるが、「感じる」程度で十分伝わる。
驚くのは、すべてCGのライオン。複数の彼らと人間が関わるシーンを長回しのカットで見せたりしてるが、この合成のハードルの高さは尋常ではなく、まさに現時点で最高レベルの映像を拝めるのだ。
そして百獣の王ライオンに素手で対抗できる俳優は、イドリス・エルバしかいない…と納得させる瞬間も多発!