ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界 (2022):映画短評
ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界 (2022)ライター4人の平均評価: 3.3
不思議だが、現実だ!?
ディズニーらしいアップテンポのファミリー冒険活劇だが現代的な視点も盛り込まれ、ワクワクする一方で考えさせられもする。
親子三世代の愛と葛藤のドラマをハートウォーミングのベースに置きつつ、最初はミステリアスに思えた異世界の秘密を解き明かす。冒険のスリルに関してはコンパクトにまとまり過ぎた感もあるが、ビジュアル的にもキャラクター面も魅力大で、退屈とは無縁。
エネルギー問題と環境問題を、ともに解決する上で生じる齟齬。これを浮かび上がらせる物語は、今を生きる人間には重いものがある。保守的な中国の市場を完全に見限った(?)、ダイレクトなLGBT要素も興味深い。
カラフルでユニークな世界への冒険
クラシックな冒険映画やコミックへのオマージュは、キャラクター設定やストーリーなどあちこちに感じられる。キャラクターの動きにも、古い手描きアニメのようなニュアンスが。だが、多様性が意識されているところは2022年ならではだ。彼らが入っていく世界は、タイトル通りストレンジ(奇妙)で美しい。斬新なクリーチャーの数々や光景を考え出した作り手のクリエイティビティには感心させられるばかり。ストーリーの核は、父と息子の関係。自分は親と似ていないと思っていても、外から見ればやはり親子なのだ。そんな共感できるテーマのほかに、さりげなく環境問題についてのメッセージも織り込まれている。
パルプ・マガジン風なオープニングに心躍る
“宇宙版「宝島」”だった『トレジャー・プラネット』にも通じる、久々にド直球なディズニー・アドベンチャー。1950年代に刊行されていたSFアメコミを意識したタイトルだけに、伝説の探検家(声:デニス・クエイド)の冒険譚をパルプ・マガジン風に紹介するオープニングに心躍る。さらに、行方不明になっていた彼を含む、三世代家族による「宇宙家族ロビンソン」的ノリに加え、チームプレイで危機に立ち向かう『ベイマックス』のドン・ホール監督作らしさも楽しめる。ただ、目を見張るような映像美に対し、売りである生命体やクリーチャーに目新しさはなく、あえて“古代の宇宙観”を表現する展開に疑問を覚える。
この世界の不思議な色と形と動きが楽しい
タイトルの"ストレンジ・ワールド"="奇妙な世界"には、ある仕掛けあり。タイトル通りの不思議な色と造形と動きの世界を描いて目を楽しませてくれつつ、そのデザインの理由が後から分かって2度オイシイ。
昨今は女性主人公が多いディズニーアニメには珍しく、中心人物は親子3代の男性たち。伝説的な冒険家、農場主になったその息子、そのまた息子は冒険に憧れるティーンエイジャー。世代を超えて"引き継がれていくもの"の物語が描かれる。声優も豪華で、父と息子は、2004年のサバイバル映画『デイ・アフター・トゥモロー』でも親子を演じたデニス・クエイドとジェイク・ギレンホール。父の探検隊の元隊員はルーシー・リュー。