警官の血 (2022):映画短評
警官の血 (2022)ライター3人の平均評価: 3.7
職業倫理を問うドラマに、硬派な味がある力作
日本のベストセラー小説を韓国で映画化。原作のスピリットを失わない硬派なサスペンスが成立したことに、まず拍手。
“真の警官になるか、卑劣な官僚になるか、ふたつにひとつ”というセリフがあるが、卑劣な官僚と揶揄される側にも正義感は宿る。その狭間に立たされた若き警官の苦悩こそが、警官の“血”、すなわち宿命だ。職業倫理を問うドラマには確かな歯応えがある。
キャスティングも絶妙で、迷いのない先輩警官=チョ・ジヌンと、迷う後輩=チェ・ウシクのそれぞれの面構えが鮮烈な対比を成す。暴力描写は控えめ。そんな節度が生きている点でも、硬派な作品である。
チェ・ウシクの好演が光る韓流ノワール
亡き祖父も父親も警察官だった若手刑事が、署内でも屈指のエリート刑事の汚職を暴こうとしたところ、やがて警察内部の裏組織の存在が浮かび上がる。佐々木譲の同名小説を韓国で映画化した作品。法の番人たる警察官だからこそ清廉潔白でなければならない。かといって、狡猾な犯罪者を追いつめるには綺麗事など言ってられない。単純な善悪では割り切れない犯罪捜査の世界を冷酷なタッチで描いていくわけだが、それだけに少年のようにあどけない純情ボーイ、チェ・ウシクの起用は大正解。どこまでも真っ直ぐでピュアな若者の視点から、善と悪の曖昧な境界線を探っていく。その説得力は明らかにキャスティングの勝利だ。
大胆な脚色から、“韓国版『孤狼の血』”に
三代に渡って警察官となった3人の男たちの激動な人生を描いた大河小説だった原作に対し、あえて一世代しか描かないという、大胆な脚色に驚き! そんな製作サイドの狙いに加え、麻薬王や暴力団組長のキャラも立っていることなど、内定調査を題材にした濃厚な韓国ノワールとして十分に楽しめる。とはいえ、父子ほど年齢の離れたバディ感がエモさを引き出す展開や白黒ハッキリしないグレイな生き様が際立つあたりは、やはり『孤狼の血』からの影響がだろう。それもあり、当初は裏社会に精通する先輩を疑いつつも、次第に翻弄されていく新人刑事を演じるチェ・ウシクも、松坂桃李の姿に重なっていく。