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桜色の風が咲く (2022):映画短評

桜色の風が咲く (2022)

2022年11月4日公開 113分

桜色の風が咲く
(C) THRONE / KARAVAN Pictures

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3

なかざわひでゆき

女優としての円熟を感じさせる小雪の芝居が素晴らしい

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 9歳の時に病気で視力を失いながらも、持ち前の陽気な性格で青春を謳歌していた若者が、大学進学を目前にして聴覚まで失うこととなり、孤独と絶望の暗闇で希望の光を見出そうともがき苦しむ。盲ろう者でありながら東京大学の教授となった福島智氏の実話を映画化した作品。それでも人生を諦めたくないという主人公の強い意志と、そんな息子を常に励まし続ける母親の二人三脚が描かれる。重いテーマのストーリーではあるが、だからこそ大らかなユーモアを交えた暖かな語り口は好印象。中でも、親としての無力感に苛まれながらも気丈に息子を支える母親役・小雪の、言葉にならない感情を雄弁に物語る抑えた芝居が素晴らしい。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

人生における障害を乗り越える

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

日々成長するにつれて、視力を失い、聴力を失っていく主人公・智。当たり前のものが次々と奪われていくことに対し、自虐的に「男版のヘレン・ケラーになりそうや」と泣きじゃくる姿に至っては、観ていて胸が張り裂けそうになるほど、田中偉登の芝居に引き込まれる。そんななか、智は無謀ともいえる大学進学を目指す。まさに逆境に立ち向かう彼の青春、小雪演じる彼を支える母の不屈の愛を描いたのは『パーフェクト・レボリューション』の松本准平監督。いろいろ中途半端だった前作と異なり、真摯な姿勢で実話と向き合った感が強く、人生の障害を乗り越える勇気を与えてくれる一作に仕上がった。

この短評にはネタバレを含んでいます
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