エッフェル塔~創造者の愛~ (2021):映画短評
エッフェル塔~創造者の愛~ (2021)ライター2人の平均評価: 3
黄金期のハリウッド映画のような正統派メロドラマ
フランスの象徴エッフェル塔の建設にまつわる秘話。ただし、本編冒頭でも説明されるように、「事実をもとに自由に作った映画」だ。エッフェル塔を設計したギュスターヴ・エッフェルには、若い頃に上流階級出身のアドリエンヌという恋人がいたものの、彼女の両親の反対で結婚が取り消された。もともとエッフェルは鉄塔建設に関心がなかったものの、突然考えを改めて前例のない巨大プロジェクトを引き受けた。この2つの事実を踏まえたうえで、建設着手の背景にアドリエンヌの存在があったのでは?と想像の翼を広げたというわけだ。まるで黄金期のハリウッド映画のような、古風だが風格のある正統派メロドラマ。実にロマンティックである。
エッフェル塔以前と以後で、世界の姿が変わる
誰もが知っているエッフェル塔の背後には、こんなロマンチックな出来事があったかもしれない。そんな視点から、実話映画ではなく、この塔の優美で近代的なフォルムに似合う、秘めた恋の物語が描かれていく。
並行して、映像自体が、エッフェル塔が当時の美意識と価値観の大きな変化を象徴するものだったことを表現していく。最初は19世紀の風景画風の田舎の柔らかな光と質感だった世界が、エッフェル塔の建設が進むと、空を背景に金属の描く曲線や直線が形成する幾何学模様のモダンな抽象画の世界に変化していく。主人公が恋する女性は、エッフェル塔同様、変化の象徴でもあり、それを演じるにエマ・マッキーの眼差しが強い光を放つ。