ギレルモ・デル・トロのピノッキオ (2022):映画短評
ギレルモ・デル・トロのピノッキオ (2022)ライター2人の平均評価: 4.5
ピノキオが新しい物語に生まれ変わる
ギレルモ・デル・トロが、有名童話をまったく新しい物語に生まれ変わらせた。ピノキオの本質とは何なのかを、最後のコオロギの言葉が言い当てる。そして、精霊的存在たちの呪術的な造形の妖しい美しさ。獣のような女のようなもの。二足歩行のウサギ。その声も魅力的で、コオロギをユアン・マクレガー、異形のものをティルダ・スウィントン、ティム・ブレイク・ネルソンらが担当する。
原案はデル・トロ。脚本はデル・トロとアニメシリーズ『アドベンチャー・タイム』のパトリック・マクヘイル。監督はデル・トロと『ファンタスティックMr.FOX』のアニメ監督マーク・グスタフソン。これらの顔合わせも相乗効果上げているのに違いない。
原作の基本を守り、膨らませたパートと作家性の感動に打ち震える
木の人形が主人公なので、ストップモーションの手法が最高にハマる。ただ最先端テクノロジーも配合され、全体として“観やすい”映像になってるかと。
ホラー風の演出や、邪悪な表現、異世界への扉、虫の擬人化具合、見世物小屋…と監督の志向がはっきり打ち出され、ミュージカルの点でもデスプラの楽曲が耳に残る。
物語では、ゼペットがなぜ人形を作り、ピノッキオが何を求めるかというアレンジが軸をきっちり固定化。ムッソリーニ時代のイタリア、戦争の脅威も加わり、深みと感動、現代に伝える意味が倍増。
限りある命と永遠の生命。普遍的テーマを鮮やかに作品に落とし込み、「両親へ」と献辞を捧げるギレルモ。リスペクトしかない。