崖上のスパイ (2021):映画短評
崖上のスパイ (2021)ライター2人の平均評価: 4.5
チャン・イーモウが描くスタイリッシュかつハードなスパイ戦
時は1934年、大日本帝国による中国人への弾圧・迫害を世界へ知らしめるべく、密命を帯びて満州国へ潜入したスパイチームと、彼らを捕らえるべく罠を張り巡らせる特務警察による壮絶な死闘が描かれる。真冬のハルピンの真っ白な雪景色、全身黒づくめのスパイと特務警察。この白と黒のコントラストを活かしたスタイリッシュなビジュアルに目を奪われ、ヒッチコック作品を彷彿とさせるチャン・イーモウ監督のスリリングな演出に息を呑む。悲壮感の漂うハードなストーリー展開も見応えがある。中国人で構成された特務警察の残酷さも際立つが、しかしやはり最も残酷なのは、同じ民族同士を敵と味方に分断させた日本の占領支配なのだろう。
雪景色に映える、チャン・イーモウ流フィルム・ノワール
昼夜問わず、屋外のシーンは美しい雪景色で、そこに溶け込んだ黒いハットとコート姿のスパイたちが映えまくる。そんな『SHADOW/影武者』のスタイリッシュさにも似た黒と白のコントラストに圧倒される、チャン・イーモウ監督流フィルム・ノワール。男女4人が2班に分かれての抗日作戦がクールに描かれるなか、監督の前作『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』に続くチャン・イーとリウ・ハオツン演じる年齢の差ペアが離れ離れになる中盤以降のトーンダウンは否めない。だが、二重スパイも明らかになる駆け引きや痛さ伝わる拷問、カーチェイスやお涙頂戴なメロドラマまで盛り込んだサービス精神に、★おまけ。