バイオレント・ナイト (2022):映画短評
バイオレント・ナイト (2022)ライター5人の平均評価: 3.6
超バイオレントながら意外に心温まるシーンも
タイトルはもちろんサイレントナイトに引っかけているのだが、単なる言葉遊びでなく本気でバイオレント。それら残虐なシーンはコメディでもある。それらを見て痛快に笑えるのか、目を覆ってしまうのかは観る人によるだろう。そんな中でも、最後には心温まるシーンが用意されていて、クリスマスの精神にリスペクトを払ったりするのだ。トンデモなミックスながら、作り手がやりたいことは明確で、それをきちんとやってみせている。体格が良く、いかつい感じがしながらも、明るく優しい内面が滲み出てくるデビッド・ハーバーを主演に据えたのは大正解。“永遠の定番”にはならないしろ、このジャンルに変化球を投げる一作。
あえて泥臭いサンタ・アクション
ノオミ・ラパス版『Mr.&Mrs. スミス』でもあった『ザ・トリップ』に続き、トミー・ウィルコラ監督の“『ホームアローン』×『ダイ・ハード』愛”を感じずにはいられない! ときにやりすぎ感もあるバイオレンス描写とユーモアのバランスなど、良くも悪くもデヴィッド・リーチ率いる「87ノース・プロダクションズ」だが、『Mr.ノーバディ』のボブ・オデンカーク同様、デヴィッド・ハーバーのやさぐれ&キレ芸が見どころ。魔法が使える設定なのに、あえて泥臭いアクションをやらせているのも興味深い。また、武装集団率いるジョン・レグイザモと女社長役のビヴァリー・ダンジェロなど、随所にキャスティングの巧さが光る。
大人版「ホーム・アローン」としてアイデア満載の暴走感
サンタクロースまわりの描き方に多少ファンタジー色が加味されているものの、基本はタイトルどおりの激烈なノリ。スゴ腕の殺し屋たちを相手に、飲んだくれで中年太りも目立つサンタが、偶然と機転、煙突やツリーで培った経験も駆使して対抗する姿は、『ホーム・アローン』の泥棒退治にも似た痛快さ、いい意味でのアホらしさを込めつつ、肝心な瞬間にリアリティをまぶして、観ているこちらのアドレナリンを否が応でも上昇させる。その勢いで、要所での強烈な描写も笑って済ませる余裕が生まれるような。
金持ち一家はキャラが立ちまくり、演じるキャストもあまりにハマリ役すぎて芸がないように感じるが、わかりやすさも楽しさにつながった好例。
凶暴なサンタが、クリスマスの奇跡を呼ぶ!?
全身タトゥーの凶暴なサンタの映画だが、パロディではなく、"サンタクロースを信じる気持ちが奇跡を起こす"という意味で正しいクリスマス映画。そんなアクロバティックな作品を可能にしたのは、サンタ役デヴィッド・ハーバーの貢献度大。人生に絶望していて無愛想なのに、純真な子供が彼の本質を見抜いて信頼する、という設定は「ストレンジャー・シングス」で彼が演じたホッパー保安官と共通点多数。そして、バイオレンスはきっちり『ジョン・ウィック』シリーズのデヴィッド・リーチ&チャド・スタエルスキ率いる87ノース・プロダクションズ流。釘が刺さったら、それを引き抜くだけでなく、そこから血が噴き出すところまで描いてド迫力。
サンタ狂い咲き
これは拾いもの! 日本では2月劇場公開なのでメリー感のなさが半端ないが、87ノース・プロダクションズの実力はしっかり発揮。ヤバいサンタ映画の系譜では『悪魔のサンタクロース』より『バッドサンタ』に近いか。しかし本作の主人公であるやさぐれたおっさん(デヴィッド・ハーパー)は、なんと「本物」設定のサンタクロース!
作品設計の元ネタである『ホーム・アローン』&『ダイ・ハード』オマージュに加え、悪党リーダー(ジョン・レグイザモ)の名はディケンズ『クリスマス・キャロル』から取られたスクルージー。ノルウェー出身のトミー・ウィルコラ監督は、サム・ライミを尊敬しているらしくホラーコメディ的センスも申し分なし。