マジック・マイク ラストダンス (2023):映画短評
マジック・マイク ラストダンス (2023)ライター3人の平均評価: 3.3
エロいダンサーの、エモい着地点
男性ストリップという、いかがわしくも魅力的な世界を描き続けたシリーズも、これにて完結。それだけに前2作以上のエモさが宿る。
主人公マイクによる最初のエロチックなプライベートダンスからして感情を盛り立てられるだろう。それが後の展開にしっかり効いてくる。ヒロインの起業の動機としてはもちろん、その後の物語にも宿り、本作だけでも一本筋が通った。
振り返ると前2作ではマイクの恋は匂わせる程度だったが、今度はより直接的だ。パンデミックにも揉まれ、波乱に満ちた人生を歩むマイクを、生みの親ソダーバーグはどうにかしてやりたかったのでは? どんな結末かは伏せるが、そこにソダーバーグの優しさがにじむ。
伝説のストリッパーが伝統的な男女の役割に中指を立てる
借金返済のためバーテンの仕事をしている伝説的ストリッパーのマイクが、イギリスから来た裕福なブルジョワマダムに才能を見込まれてスカウトされ、ロンドンの格式高い老舗劇場で女性の性的願望を具現化した画期的な男性ストリップ・ショーを演出することになる。これって例えば主人公マイクを女性に、マダムを男性に置き換えるとセクシズム丸出しになりかねない話なのだが、あえて男女の役割を逆転させることで、伝統的なジェンダー規範の問題点を可視化させている点はなかなか技あり。要するに、恋愛においてもセックスにおいても、男女がお互いを尊重して対等な関係で愉しむって大事だよねというお話。確かにその通りですな。
テイタムのセクシーダンスは見る価値あり
配信用映画として作られたが、急遽劇場公開に。後半のショーのシーンは実際に自分も目の前で彼らのダンスを見ている気分になり、ビッグスクリーンで上映する価値はあった。だが、冒頭のチャニング・テイタムとサルマ・ハエックのダンスは超セクシーなのに、その後に出てくるのはレベルこそ高いものの妖艶さは抑え目。最後にはまたテイタムがバレリーナ相手に濃厚なダンスを見せてくれるが、過去2作とはトーンがやや違う。さらに、フェミニスト的メッセージも。男性のダンスを見ることに女性の開放を(しかも男性監督と脚本家によって)こじつける必要はない。何も考えず楽しめるのがこのシリーズの売りなのに、これは余計。