PIGGY ピギー (2022):映画短評
PIGGY ピギー (2022)ライター2人の平均評価: 3.5
多感なティーンエイジャーの心が揺れ動く
スペインの田舎の真夏の日差し。主人公の父親が営む食肉店で加工される肉。それらに満ちた世界で、クラスメートにいつもいじめられている10代女子が、いじめっ子たちが謎の男に自動車で拉致されるところを目撃してしまったら、どのように行動するのか。主人公は自分の気持ちを言葉にしないので、観客はその行動を見ながら、彼女がその時、何を想っているのかを想像し続けることになる。男がいじめの現場を見て加害者たちに罰を与えたと知った時。男が彼女の家に侵入した時。男が多数の人々を殺害してきたシリアルキラーだと知っても、主人公の心理は単純ではなく揺れ動き、それを女性監督カルロタ・ペレダが脚本も手がけて細やかに描き出す。
モラルについて問いかけてくる優れたホラー/スリラー
ダークで、オリジナリティあふれる社会派のホラー/スリラー。クライマックスには非常に恐ろしいことが待ち受けているが、映画のはじめの日常を描くシーンは、もしかするとそれ以上に怖い。いじめ、いじめを見て見ぬふりをすること、自尊心、復讐、思いやり。この映画は多くのことを問いかけてくる。ほかの映画では見ないような悪者も、モラルの複雑さを象徴するもの。その狭間で葛藤する主人公サラがどんな決断をするのか、最後まで緊張させられた。そんなサラを体当たりで演じるラウラ・ガランに、観客は強く思い入れしてしまうはず。彼女と、監督兼脚本家カルロタ・ペレダが次に何をやるのか、今から楽しみだ。