熱のあとに (2024):映画短評
熱のあとに (2024)恋愛と幸福(戦争と平和)の考察から「生の実感」を問う怪傑作
片山慎三監督の短篇『そこにいた男』と同じ実際の新宿ホスト殺人未遂事件を着想としつつ、ルポ的写実やジャンルの型から遠く離れ、白熱の思弁的恋愛映画が爆誕した。核の主題は「幸福」VS「愛」。危険で潔癖な「愛・原理主義者」とでも呼べる主人公の沙苗を、橋本愛が殉教者の如き凄みで演じる。
増村保造『妻は告白する』、万田邦敏『Unloved』、濱口竜介『寝ても覚めても』等のバトンを受け継ぎつつ、沙苗とよしこ(木竜麻生)の告解室の理念激突はベルイマンばり。監督の山本英は脚本のイ・ナウォンと共に膨大なテキストを劇に導入する方法論へと大胆に踏み切り、渡邉寿岳の撮影、岡田拓郎の音楽等を得て寓話的厚みをも獲得した。
この短評にはネタバレを含んでいます