アクアマン/失われた王国 (2023):映画短評
アクアマン/失われた王国 (2023)ライター5人の平均評価: 3.8
とっ散らかった中で地球温暖化への警告をする
今回もモモアはカリスマたっぷりで頑張っている。だが残念なことに、トーンもストーリーもとっ散らかった結果に。コアとなる兄弟で力を合わせる話も、先の予想がつくし、ラストのパトリック・ウィルソンのせりふも陳腐(彼のせいではなく脚本のせい)。アーサー(モモア)のイクメンぶりは愛らしいも、彼と釣り合わず、本当は降板させたかったアンバー・ハードと並べないようにするため、最初のほうはまるでシングルファーザーのよう。ハードの存在意義はアーサーに妻子がいると見せることだけ。アクションはスピードこそあれ緊迫感がなく、色々起きているのに退屈させる。地球温暖化のメッセージの意図はいいので星ひとつおまけ。
期待通りの直球痛快アドべンチャー
単純明快かつ痛快。最初からこのシリーズは『ダークナイト』の呪縛とは無関係に、ジェームズ・ワン監督が独自の世界観を貫いてきたことを痛感。クリーチャーだけでなくメカのデザインも、海洋生物の形を踏まえているという直球ぶり。前作に続いて、ワン監督映画の常連パトリック・ウィルソン演じるアクアマンの弟オームが、予想以上の大活躍。マーベルではFBI捜査官ジミー・ウーを演じるランドール・パークが、前作に続いてシン博士に扮し、こちらも大健闘。
ラストシーンが、ある映画のラストを連想させ、本作がこれから始まるDCスタジオの前の、最後のDCエクステンデッド・ユニバースの映画であることを再認識させる。
”海の王”の新たな戦いのモチベーションは、家族
前作では責任感に欠けていた“海の王”も本作では人の親。すっかりファミリーマンと化したコワモテの主人公にユーモアをにじませながら、新たなアドベンチャーを展開させる。
海洋はもちろん、砂漠にジャングルと、前作以上にスケールを広げた物語。アクションのフィールドが広がった分スリリングだし、また前作のヴィランだった弟との骨肉珍道中のユーモアもあり、大いに楽しめる。
『死霊館』以来、その傾向が強くなったが、J・ワン監督はどんなジャンルでも家族の物語に落とし込むことがうまい。本作も例外ではなく、ファミリーマンとなったアクアマンらしい結末を用意。前作以上にモモアを好きになる!?
最後の大花火
ジェームズ・ガンによる大掛かりなリセットが宣言されてからDCコミックスの映画がことごとく面白いのは何とも皮肉な展開です。今作で大きな区切りなってしまいます。今さら言ってもしょうがないのですが何とも勿体ない感じがします。最後の大花火となる本作は腕利きキャストによるヒーロー映画とはこうあるべきという楽しい一本でした。何よりジェイソン・モモアがアクアマン役に対してノリに乗っているのが伝わってきます。ここへ来て岐路に立った感のあるアメコミ映画ですが、これに関してはあれこれ考えずにシンプルに楽しい映画に仕上がっています。
アンバー・ハードを冷静に観れなくても全体には豪快に楽しめる
すっかり良きパパとなったアーサー/アクアマンの日常描写で滑り出し快調。イクメンぶりも発揮しつつ、ギネスビールを飲みまくる豪快さ。そして観る前は「どれくらい出てくるのか」と気になったアンバー・ハードも、赤ん坊の母親としてかなりしっかり登場。どうしたってジョニー・デップとの泥沼裁判劇が脳裏をよぎり、観ていて落ち着かないのも事実だ。アンバーの表情の奥に恐ろしい何かが見える…。
ワン監督らしくアクション映像は絶好調。クリーチャーやメカのデザイン&役割もマニア心をくすぐる(特にタコ!)。シンプルにバトルの行方に興奮するも、ここ数年の、マーベルも含めたヒーロー映画のネタの枯渇感は否めないことも改めて実感。