ポトフ 美食家と料理人 (2023):映画短評
ポトフ 美食家と料理人 (2023)ライター2人の平均評価: 3.5
美食大国フランスからやって来た究極のグルメ映画!
19世紀末のフランス。社交界にその名を轟かせる美食家と、彼の理想を完璧に再現する天才女性シェフ。「美食の追求」という人生のテーマによって結ばれた、およそ凡人には理解の出来ない2人の愛と情熱の世界を描いていく。いやあ、これは『バベットの晩餐会』に匹敵する…もしくはそれ以上に贅沢な究極のグルメ映画かもしれない。素材へのこだわりは勿論のこと、気の遠くなるほどの手間暇をかけた調理法がまた圧巻。それを丹念に丹念にカメラに捉えた映像美のなんと艶めかしいこと!実在の美食家をモデルにしたそうだが、いかにも美食大国フランスらしい映画である。ジュリエット・ビノシュとブノワ・マジメルの元パートナー共演も要注目!
熟練職人の手仕事は見ているだけで気持ちいい
料理映画やグルメ映画というより、職人映画として魅力的。19世紀フランス、至高の料理を追求する男と女。食について同じ美学を共有する2人が、素材選びから始まって盛り付けに至るまで、一皿を創造していく姿はまさにアーティスト。そこで行われていることは言葉では説明されないが、熟練した職人による無心の手仕事は、見ているだけで気持ちいい。そうして出来上がった一品は、見た目も美味しそうで食欲をそそる。
畑から鍋の中を経て皿に至るまで、色彩は、常にフランス風の明るい中間色。音楽はなく、開け放たれた窓の向こうから、遠くで鳴いている鳥の声がする。何かを創り出す喜びが、鍋の湯気と共に湧き上がってくる。