夜の外側 イタリアを震撼させた55日間 (2022):映画短評
夜の外側 イタリアを震撼させた55日間 (2022)鉛の時代の最暗部をめぐる巨匠渾身の大傑作
『夜よ、こんにちは』(03年)でマヤ・サンサがキアラとの役名で扮した極左武装組織「赤い旅団」の女性メンバーが今作ではA・ファランダとして登場し、1978年のDC党首アルド・モーロ誘拐事件を取り巻く大群像のひとりになる。分断や対立を超えて中道や融和を図る「歴史的妥協」が潰された55日間を巡り、『羅生門』形式に準じるようなパノラマ的人間劇が展開する。
元々は全6話のドラマシリーズ。ベルイマンの『ある結婚の風景』(74年)やファスビンダーの『ベルリン・アレクサンダー広場』(80年)等と並ぶ、この長さでこそ実現できたマルコ・ベロッキオの集大成だ。エンタメの外連味もありスリラーとしても超一級品。
この短評にはネタバレを含んでいます